こじらせてもうた

腐女子のモノの見方

エシレのバターケーキの深淵をのぞいたら、深淵もまたこちらをのぞいていた

エシレバターをご存知だろうか。

フランスの小さな村で昔ながらの製法で作られる高級バターだ。その香りの高さから世界の三ツ星レストランで愛されている。

 

そんなエシレバターをクリームの半分に使用した、究極のバターケーキがある。

 

それが、「ガトー・エシレ ナチュール」

 

ガトーエシレナチュールの画像

https://www.kataoka.com/echire/maisondubeurre/index.html

 

 

お値段は4000円。(税抜) 

 

このバターケーキは東京の丸の内にあるエシレ専門店、エシレ・メゾン デュ ブールのみで販売されている。

 

つまり、日本にここだけしかない。

 

1日の生産数は15台ほど。

予約や取り置きもできないし、通販で取り寄せることもできない。

 

手に入れる方法は、

早く来て並び、整理券をもらう。

それだけ。

  

そんなに入手困難なケーキ

....1回食べてみたい!!!

 

 と食いしん坊の血が騒ぎ、チャレンジしてみました。

これはその汗と涙の格闘の記録です。

 

1回目〜ビギナーズラックは突然に〜

初チャレンジは土曜日。

思いがけず早く起きた朝、間に合うかはわからないけど行ってみよう、と軽い気持ちで電車に乗った。

 

着いたのは開店の40分前。

 

イイ線いっただろうと思ったけど、すでに40人ほどが並び、列は仲通りにまで伸びるほど。整理券ゲットはまずムリな状況。

 

甘く見ていた...

 

でもせっかく来たんだし、クロワッサン(午後には完売する人気商品)も食べてみたかったので、そのまま並ぶ。

 

通りにはふだん私が買う洋服よりゼロが一つ二つ多いブティックがズラリ。

近くにはロンドンのような庭園とレンガ造りの美術館。

隣にはアンティークショップ。

 ブリックスクエア周辺の街並み

そんな街並みに立つ、全身をユニクロとGUに守られた私。

 

 場違い感しかない。

 

さらに、この日の気温は5度以下。

ビル風が吹きすさび、手がかじかむ。耳も痛くなる。足元から冷えも来る。

体を小刻みに揺らして寒さをしのぐしかなかった。

 

なにかの修行のような過酷さ。

いったい自分はなんのためにこんな寒い中で立ち続けているんだろう...

自分の食欲という業の報いを受けている気がした。

 

10時ジャスト、やっと店がオープン。

しかし、店が開いてもなかなか入店できない。

店内には10人ほどしか入るスペースがなく、1人が店を出るごとに、1人が店内に入る状態。

少しずつ、少しずつ列は進み、30分後、冷えの辛さがマックスに達した頃にようやく店に入れた。

 

一歩入ると、一気に押し寄せてくる焼き菓子の匂い。オーブンの熱であたたかい店内。

正面にある木製の攪拌機とあふれんばかりのバターの写真。

極寒からやってきた身にとっては天国だった。

 

客たちはみな、 並んでいた分を取り返すようにたくさん買っていた。

ケーキにクッキー、フィナンシェにクロワッサン...

 中には2万、3万と買っている人もいた。

日本にはまだこんなに景気の良い場所が残っていたのか。自分も迷ったものを全部欲しくなってくる。

 

と、ふいに奇跡的は起こった。

バターケーキの整理券をもらっていたのに、直前でキャンセルした客が出たらしい。

 

たぶん遠方から来た人が、ケーキの持ち運び時間を聞いて諦めたのだろう。

店員さんが1人1人に「ガトー・エシレ ナチュールが1台ありますが注文されますか?」と聞いていたのだ。

 

意外にも、ケーキの大きさと持ち運び時間などでみな断っていた。

ビギナーズラック!!買えるかも!?と鼻息が荒くなる。

 

しかし、ちょうど私の前のおじさんが食い気味に

「ください」

と即答。

ラッキーは彼の手に渡った。

こうして初のエシレチャレンジは失敗。。。

 

悔しくて、自分の番が来たときはいっぱい買ってしまった。散っていく財。

エシレバターを50%使ったクロワッサンの有塩と無塩と、生ケーキを全種類買った。

 

また来ようと心に誓った。 

 

2回目〜本気の敗北〜

それから何週間後かの土曜日。今度はオープンの1時間15分前。

先頭グループに食い込んだものの、20人ほど並んでいた。

整理券をもらえるかは、かなり微妙。

しかし、生産台数は15台ほど、つまり16台17台の可能性もあるので、希望は捨てずに並んでいた。

 

よく見ると、先頭グループの客層は男性が7割を占めていた。

女性ばかりだと思っていたから意外だった。

きっと恋人や家族へのお遣いものだろう。

人は誰かのためなら強くなれる。どこかで聞いたセリフが頭に浮かんだ。

 

面白いことに、開店までの1時間ほどの間で小さなコミュニティができあがっていた。

「どちらからきたんですか?」

「あ、大阪です。」

「へえ、大阪!」

「出張なんです。カミさんからの頼みだったんですけど、いや〜こんなに並んでるとは...」

もちろん他人同士だが、「エシレのバターケーキのために並んでいる」 という志を同じくした者に通じる何かがあったようだ。

 

1番目に並んでいた気の弱そうな男性は、何人かから「何時から並んでるんですか?」

と聞かれていた。

すまし顔で「6時半です。」と答える男性。

「おおーっ!!」とどよめく周囲。なんなんだこの空間は。

 

 

前回に比べて寒さはマシだったが、この日は店員さんから待っている人にカイロが配られた。心遣いがありがたかった。

エシレで配られたカイロ

 

 

開店15分前になると、店員さんが整理券を手に店の外に出てきた。

 

「ただいまから、ガトー・エシレ・ナチュールの整理券をお配りします。」

 

それまでの和やかさから一転して

ピリつく雰囲気。

まるでオーディションの結果発表の空気感だった。

 

店員さんが1人1人に「購入されますか?」と確認しながら整理券を手渡していく。

皆、待ってましたとばかりに取っていた。

 

私は目を落としてスマホをいじっていた。

整理券とか気にしてませんけど?というポーズをとりつつ、内心ドキドキしまくっていた。だが視界の端でだんだん店員さんが近づいてくるのがわかる。

 

どうなのか…?買えるのか...?

 

パッと顔を上げると、

 店員さんは私の前に並んでいた男性に整理券を手渡すと、クルッとこちらに背を向けて歩き出した。

そして「本日分のガトー・エシレ・ナチュールは完売いたしました。」とアナウンスし、バターの香りの中に消えていった。

 

 

敗  北 。

 

 

まっ白な頭に、この二文字だけが叩きつけられる。

 

整理券をもらった人々は皆ホクホクとした表情だった。

スマホで整理券を撮ったり、電話で「もらえました。確実です!はい!」と上司らしき人に報告している人もいた。

 

わかっていた。私には、覚悟が足りなかった。

早くに行かなければいけないけど、待ちすぎるのも嫌だ。できれば10番目くらいがいい。そう考えていた自分のずるさを恥じた。

6時半に到着した彼はそんな損得など考えず、まっすぐにバターケーキを手にいれることだけを考えていたのだ。

 

「覚悟はいいか?オレはできてる。」

 

ふいにジョジョ第5部のブチャラティのセリフが心に浮かんだ。

 

無意識に手の中のカイロを握りしめた。

  

3回目〜ついにそのときは来た〜

いよいよ最終手段を使った。

有給休暇だ。

前日の夜から「明日はエシレだ...」とソワソワしていた。

 

到着したのは開店1時間前。

平日なので列は短かった。

3回数え直したが、10人ほどしか並んでいない。

確実に整理券をもらえる圏内に入る。

ようやく、手に入れられるのだ。

 

この間のドキドキはなんだったのか、と拍子抜けするぐらい心穏やかに時間をつぶした。

 

いよいよ整理券の手渡し時間である。危なげなくもらった。

落とさないように、しっかり握った。

エシレのバターケーキの整理券

達成感というより、安堵だった。

 

バターケーキだけを買い、足早に店を出た。 

早く食べたい気持ちがつのる。

 

しかし、家についてすぐに食べられるかというと、そうはいかない。

バターを室温に戻してからが食べごろだと付属の紙に書いてあったのだ。

 

ケーキを神棚に置くようにテーブルに出す。

ブルーのリボンが映える。

 

40分でナイフが通る柔らかさになった。

 

そして...時は来た。

エシレガトーナチュール

大きさは横15cm、たて5cm、高さ8cm。

想像していたよりも小さかった。

5〜6人前だろうか。

 

 

f:id:naataso:20190220131946j:plain

このケーキを構成するものは、ビスキュイ生地とバタークリームのみ。

ぶ厚いクリームの壁の中で、バターと生地がミルフィーユのように5つの層をつくっている。

シンプルこの上ない。エシレの自信が伝わって来る。

 

思い切って口の中に入れる。

 

正直、手に入れる難しさを含めての美味しさなんだろうとか、

意外と味は普通とかそういうオチがあるのではないかと思っていた。

 

しかし、その心配は無用だった。

めちゃめちゃ美味しかった。

 

 

重たく思われがちなバタークリームだが、驚くほど軽い。

そして鼻を突き抜ける甘い香り。

層を成すビスキュイ生地は、洋酒のシロップがよく染み込んでいてしっとり。

 

口の中でクリームと生地ががほぐれ、一体となって流れていく。

上質な寿司を食べている感覚。

ついついもう一切れ...とナイフを手にとる魔力があった。

 

f:id:naataso:20190220140327j:plain

クリームに挟まれた角っこの部分がイチ推し。多幸感に包まれる。

 

結論。

ガトー・エシレ ナチュールは、バターを最高に美味しく食べられるケーキだった。

 

「うちのバターの力を見たか」と、エシレにそう言われているような気がした。

終わりに

こうして、エシレのバターケーキへの挑戦は終わった。

 

買いたい!と思っている同士に、アドバイスを残しておく。

 

・賞味期限は製造日の翌日まで

・ケーキの持ち運びは2時間だが、専用の保冷バッグを買うと1~2時間延命できる(商売上手)

・平日は9時、土日は8時から並ぼう。連休は想像がつかない。

・トイレは忘れずに行っておこう。

・夏はバターが溶けやすいのでおすすめしない

・ビル風が強いので寒さ対策は大事。帽子で耳、カイロで足元の冷えを防ごう。

・アクセスは東京駅JRの12番出口から美術館を通っていくのが近いが、無理に地下から行こうとすると迷う(というか迷った)丸の内南口からブリックスクエアを通るのがおしゃれで楽しいのでおすすめ。

 

個人的に美味しかったもの

フィナンシェ

一番のおすすめ。外はカリッと、中はしっとりで、バターの風味が抜群。バクバク食べれるので1人3個ぐらい買う。寝かせるとしっとり度が増してそれも楽しい。

ミゼラブル

f:id:naataso:20190220144720j:plain

1人だと大きいバターケーキは食べきれない!という人におすすめなのがミゼラブル。

バターケーキと同じく、エシレバターが50%入ったクリームが使われている。

違いは、バターケーキがスポンジ生地なのに対して、ミゼラブルはダクワーズという卵白とアーモンドプードルを使った生地。あとクリームが表面を覆っているかいないか。

ダクワーズはネチっとした食感が特徴。甘みがあるので食べた感がすごくある。

ショソン・オ・ポム

クロワッサン生地でりんごのコンポートを包んだパン。

個人的には感動はクロワッサンよりも上だった。

自家製のコンポートはりんごの味が濃く、バターの風味との相性が最高。

冷えた状態で頂いたが、バクバク食べて気がついたらなくなっていた。

810円と値は張るが、その価値はあると思う。

 

 

というか、

 

 

こうやって書いていたらまた食べたくなってきた...

 

みなさんも、エシレの沼に片足を突っ込んでみてはいかがだろうか?

 

(完)